本書を通じて「群集心理」は、真実であるかどうかは無視して、
野蛮で本能的な願望を満たすために働く、ということが分かりました。
一方で、群集心理がよい方向に働くこともある、とル・ボンはいいます。
群集心理が良い方向に働くパターン
多くのひとが良きことをしている状況であれば
多くの人は維持しようとします。
公衆トイレのポスターに
「いつも綺麗に使っていただきありがとうございます。」
とありますよね。
これは
「みんな綺麗に使っているんだ、私も綺麗に使わないと」
という、徳性に働きかけたものです。
では、どういうときに徳性が働いたり、働かなかったりするのでしょうか。
ル・ボンは指導者の「暗示」の仕方に違いがあるといいます。
「人為的威厳」と「人格的威厳」
後天的な人為的威厳・・・家名・肩書・資産・評判など
先天的な人格的威厳・・・カリスマ性をもつ
たとえば、
テニスプレイヤーの大坂なおみさんの発言によって
人種差別の問題が大きく取りざたされ、議論されるようになりました。
これは彼女の具えもつ先天的な人格的威厳の力といえます。
ル・ボンは当時のつめこみ型の教育にも問題を呈しています。
つめこみ型の教育の問題
小学校~大学までずっと教科書つめこみ型の教育で、
いざ就職となった場合、大切なものが抜け落ちています。
ただ教科書を丸暗記するような勉強法を続けていると
思考する体力をどんどん奪われてしまうのです。
社会に出て大切なのは、
「判断力」「経験」「創意」「気概」であるとル・ボンは説きます。
「断言」による「洗脳」「感染」を受けないために
思考する体力を奪われた私たちが
「断言」による「洗脳」を受けないためには、
「これこそが絶対に正しい」という考え方をなくす、
そうするためにも頭の中に議論するための、
異論を受け入れるためのスペースを空けておくことが大事かなと思います。
仏教の「空」の理論に似ますね。
維摩経では
「空」を学ぶなら、仏教以外から学べ、と説きます。
1つのことに執着せず、異論を排除せず、
またそれに固執しないという態度の表れです。
ライターの武田砂鉄さんは、
書店に行ったとき、自分に全く興味のないコーナーに立ち寄るといいます。
医学、法律のコーナーでは自分のまったく知らない世界であらゆることが
議論されていると思うと、それだけでも視野がパァッと広がりますね。
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