子どもは「母性」と「父性」の影響を受けて育ちます。
「母性」とは包みこむやさしさ、愛情
「父性」とは規律、規範、厳しさ、基準
「母性」と「父性」が適正に働いていれば、子の精神は健全に育ちます。
母親は、子どもに愛情を注ぎこみ、承認し、自己肯定感を高め、自信をつけさせます。
父親は、子が将来ひとり立ちできるように、社会のルール、厳しさ、規律を教えます。
したがって、
「母性」と「父性」が、子の人格形成に大きな影響をあたえる、ということです。
「母性」と「父性」の観点から、
湊かなえ著『告白』に出てくる重要人物、
「修哉」と「直樹」について分析、考察していきます。
これより先、ネタバレありです。
修哉
クラスでも優秀な成績を修めます。
中でも科学の知識は相当なもので、学生発明品コンテストに応募し、入賞するほどです。
しかし、コンテストに入賞しても新聞での扱いは小さなもの。
それよりも、同じ中学生が起こした殺人事件が紙面を大きく飾ります。
殺人を犯すほどのインパクトがないと誰も自分を認めてくれない、と錯覚し、
クラスでも陰気な直樹に、友達になろうと歩み寄り、そそのかし、共謀し、
クラスの担任、森口先生の娘を殺す計画を企てます。
修哉は「誰かに認められたい。褒められたい」事に執着しています。
修哉の母 典型的な毒親
修哉の母親は科学者であり、研究職に就いていましたが、結婚を期にその道を閉ざします。
しかし、今度は研究職としての夢を息子に託し始めます。
まだ幼い修哉に、無理な課題を押し付け、
何度教えても出来ない息子に、ヒステリックを起こし、
暴力を振るうように。
結局その家庭内暴力が原因で、修哉の父と母は離婚し、修哉の母親は家を去ります。
これにより、修哉は、幼少期から、母親からの包みこむような
「愛情」や、「承認」といったものが完全に抜け落ちて育ちました。
そのせいで修哉は誰かに褒められたい、認められたいといったことに執着していたのです。
修哉の父 父性の欠如した父親
修哉の父親は作中では存在が薄いですが、修哉の口から決定的な一言が出ます。
「最低な凡人と結ばれ、生まれた子、それが僕だ。」
「凡人」、つまり、
厳し過ぎる態度の父親というわけではないが、
憧れの存在になるほどの魅力も感じない父であった、という事です。
つまり、修哉の父親には「父性」が欠如していたのです。
「父性」とは社会のルールや秩序、つまり、
良い行いと、悪い行いといた善悪の区別、けじめを子に教えるものです。
これが欠如すると、子供はやって良い事と、悪い事、物事の善悪がつかなくなります。
現に修哉は動物虐待という非行に走るようになります。
修哉の人格
修哉はこのように「母性」と「父性」の影響を受けて、今の人格を形成しました。
世間から認められたいという承認欲求を満たそうと必死になり、
善悪のつかない犯罪行為に走るようになったのです。
次回は『告白』のもう一人の重要人物「直樹」について分析、考察します。
参考文献:「父性」について映画、アニメ作品を考察する作品評論の名著
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