スタニスワフ・レム著『ソラリス』Part2 「この世で最も恐ろしいことは?」

読書感想

宇宙人とのファーストコンタクティ
(未知なるものとの最初の接触)を描いたSF小説です。

「宇宙人」とは人智を超えた存在です。

この作品には、

人が人智を超えた存在と出会ったとき、
どのような反応を示すのかが描かれています。

この世で最も恐ろしいこととは、なんだと思いますか?

以下、ネタバレ有です。

惑星ソラリス探査用のステーションの乗組員たちは、
「お客さん」と呼ばれる、幽霊のような存在に苦しめられます。

ある者は自殺した恋人、ある者は子どもの実体を見ます。
幽霊でもなく、幻覚でもなく、実体として出現するのです。

乗組員たちそれぞれの前に現れる「お客さん」には

「自分が封じ込めている記憶」

「一番見たくない潜在的な“記憶”」

という、共通点がありました。

実際に起こらなかったことの方が恐ろしい

わたしは、物語作品は、
「起こらなかったもう一つの人生を見出す」という
希望を見いだすためのもの、と思っています。

しかし! 

本作では正反対のセリフが出てきます。

「実際起こったことより、

起こらなかったことの方がずっと恐ろしい」

学生時代、退屈な学校生活を送っていると、
突然テロリストが学校を占拠してみんなパニックに陥る・・・

なんて妄想、一度はしたことありませんか?(わたしのあるあるです)

頭の中で一瞬思い描いた、卑小な、下劣な、闇の部分、
それが実体となって現れるのです・・・。

こんな恐ろしいことが他にあるでしょうか・・・。

理想を追い求めていたはずが、現実を突きつけられる

と、同時に、痺れる仕掛けでもあります。

人類は、宇宙に、夢と希望、
そして、ロマンを追い求めて
地球から飛び立とうとします。

しかし、

人は本当に「宇宙人」と会いたいと思っているでしょうか。

実際のところは、自分の理想化したイメージを、
宇宙に投影したがっているだけではないでしょうか。

ソラリス探査用ステーションの乗組員たちは、
夢と希望を求めて惑星ソラリスへ向かいました。

しかし、実際に惑星ソラリスに到着すると、

自分が隠してきた、自分の卑小な心の奥底を、
拡大されて、突きつけられてしまうのです。

自分のパソコンやスマホの中の見られたくないフォルダや
メッセージ履歴を、拡大されて街に貼りだされるかのようです。

これこそ、この世の最も恐ろしいことではないでしょうか。

(次回に続きます。)

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スタニスワフ・レム『ソラリス』 2017年12月 (100分 de 名著)
スタニスワフ・レム『ソラリス』 2017年12月 (100分 de 名著)

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