スタニスワフ・レム著『ソラリス』Part1 この世に「絶対」はない。

読書感想

宇宙人とのファーストコンタクティ(未知なるものとの最初の接触)を描いたSF小説です。

「宇宙人」とは人智を超えた存在です。

本書では、

人間が、

自分の理解を超えた存在と出くわしたとき、

どのようなことが起こるかを

描き切った作品です。

人間が理解出来ない領域

「人間が理解出来ない領域」と言えば、

カントの『純粋理性批判』を思い出します。

カント曰く、

人間は生まれながらにしてヒト規格の眼鏡をかけているようなものだ。

それを超えたものは認識できないといいます。

例えば、

リンゴという果物は赤色で丸い形をしています。

これは万人が共通してそのように認識出来ていますが、

猫は「赤色」が認識できません。

猫にとってはリンゴは赤色ではないのです。

リンゴの赤い色や、丸い形、というのは、われわれが認識出来る範囲のことで

実際(という表現もおかしいですが)はもっと違う色形をしているかもしれません。

この世に「絶対」はない。

引き続きリンゴの例を用います。

このあたりをインド人は、

サンスクリット語において、「赤性がある」と表現したようです。

「今は赤色に見える、限りなく赤、だから赤性がある」という意味合いです。

「未来永劫、この「赤色」が「絶対」なわけがない」

「この目の前の現象にある本質は何かを覗いてみよう」

という、態度があったわけです。

私たち人間でさえ「絶対」ではない。

私たち人間は生まれた瞬間から毎秒死に向かっています。

今というものが「絶対」的に保てるわけがないのです。

国や政治でさえも、生活の基盤でさえも、

足元から揺らぐようなことが、現代の社会でも起きています。

著者 スタニスワフ・レムの生涯 「この世に “絶対” はない」

著者 スタニスワフ・レム は

「あらゆるものはうつろいやすく、

 不確かなものだと思い知らされてきた」

と語ります。

スタニスワフ・レムは、ユダヤ人であり、激動の時代を生き抜きます。

生まれ育った故郷の支配国は5度も替わっています。

この経験によって、

この世に、

絶対で確固たるものはなく、今に対して懐疑的な態度を取っていたのでしょうね。

それが作品にも反映されています。

宇宙には人間の理性では理解できないものがいっぱいあります。

「ソラリス」とは本書においては絶対的な「他者」の象徴といえます。

この絶対的な「他者」(人間の理解を超えるモノ)に出会ったとき、

人間はどうすべきか!

次回は物語の内容に触れていきたいと思います。

そういえば、「コロナ」って絶対的な他者(人智を超えた存在)ですよね。

次回

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スタニスワフ・レム『ソラリス』 2017年12月 (100分 de 名著)
スタニスワフ・レム『ソラリス』 2017年12月 (100分 de 名著)

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