【本の要約・気づき】『ニコマコス倫理学』アリストテレス著――役に立つ、役に立たない、というのは社会のものさしで測っているに過ぎない。

読書感想

22.05.23 放送 『100分de名著』より

内容をまとめていきたいと思います。




前回までのおさらい

アリストテレスは、

・幸福になりたいなら、徳を身につけよ!

・徳を身につけたいなら習慣的な行動で身につけよ!

と、説きました。



前回までは、

個人でどうこうせよ、

という個人レベルの話でした。



今回のテーマは「友愛」です。

人とつながることで、

幸福への道が開けるというものです。



どの哲学書でも、仏教の教えでも、

最終的には

「人は一人で生きているのではない、

 他人によって生かされているんだ」

というところに帰結するのは

本当に興味深いです。

真理なのでしょうね。



古代ギリシアにも

「一人で生きていけるのは野獣か神である」

という名言もあったそうです。



それでは、

「友愛」について

掘り下げていきたいと思います。




「友愛」とはなにか

友愛を成立させる3条件

① 相手に好意を持ち、相手の人生が善い方向へ向かうことを願う。

② 相手も好意を持っている

③ 互いに好意に気づいている。




友愛には3種類ある

① 人柄がよいからつながっている

② 一緒にいて楽しい、安心できる、心地良いからつながっている

③ 一緒にいて役に立つからつながっている




どの友愛が好ましいか

番組レギュラーの伊集院光さんが

うまいたとえ話を出していました。



伊集院さんは、芸人仲間同士で

草野球を楽しんでいるそうです。



チームメイトは、

「こいつはよく打つから、

という「有用」のみで

つながっているわけではない」

と言います。



チームメイトには

「なんだか一緒にいて楽しい!」

「ムードメーカーになる!」

「こいつがいてくれることで場が和む!」

なんて人もいて

それによってチームが活気付いたりして

よい循環をもたらすといいます。



「有用」――

「試合で役に立つこと」という点で人がつながると、

役に立たない人たちを排除する、という理屈になります。



さらに、悪いプレッシャーがチームの空気を支配し、

ギスギスして、それまで成績がよかった選手も動きが悪くなる

という悪循環をもたらすでしょう。



アリストテレスは、

3種類の友愛のどれをも否定しません。



人は、それぞれが複雑に絡まりながら

相互に改善しながら生きている。

といいます。



とてもいいことばです。



社会の物差しで有用であるか、

有用でないかをはかり、

人を排除すると、

つながりそのものが息苦しくなります。


また、自分自身も、排除されないように、

という価値基準でビクビクしながら

生きるようになると思います。



人間関係に苦しさを感じたら、

ときどき、「友愛」のことばを思い出して

アリストテレスの、哲学のものさしで

あらゆる存在を照らしてみたいと思います。




ニコマコス倫理学(上) (光文社古典新訳文庫)
ニコマコス倫理学(上) (光文社古典新訳文庫)
アリストテレス『ニコマコス倫理学』 2022年5月 (NHKテキスト)
「究極の幸福」はどこにある? 「人はいかに生きるべきか」を徹底的に考え抜き、2000年以上も生き残った古典中の古典。人生の目的はなんだろうか? 幸福はいかに獲得しうるのか? 正義とは、勇気とは、友愛とは? 古代ギリシア最高の知性による思索を...

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