あらすじ
近所に住む「むらさきのスカートの女」に はいつも決まった行動パターンがあり、
街の人たちから不審がられている。
そんな 「むらさきのスカートの女」 が気になって仕方がない「わたし」
彼女と「ともだち」になるために、接近します。
※ 以下、オチに関わる重大なネタバレはありませんが、物語の内容には少し触れています。
おもしろかったポイント ① 陰キャ特有の歪んだ思考に共感
主人公の「わたし」は、 「むらさきのスカートの女」 のことが
なぜか気になって仕方がありません。
近隣のひとたちは不審者扱いしますが、
「わたし」はともだちになろうと
手を変え品を変え工作します。
そのために 「むらさきのスカートの女」 の行動パターンを細かくチェックしたり
住んでいるところを突き止めたりします。
こうなってくるとどちらが不審者かわかりません。
「わたし」の考えたともだちになる作戦とは自分の職場に誘い込むことで
ここまでの道のりも面白いですが、このあとの展開も面白く、
「むらさきのスカートの女」 が職場に馴染みはじめると
嫉妬を感じ始めます。
「ともだちになりたいのはわたしなのに!クソがっ!」
といった感じですね。
この陰キャ特有の歪んだ感じがよく出ていて凄くこの作品が好きです。
おもしろかったポイント ② 女性グループのいじめ
あなたの職場は「新人」がくると快く歓迎する職場ですか?
「職場」というのは「学級」と違い、友達になるための場所ではありません。
趣味や話があうかどうかよりも、最初は品定めされるとこから始まります。
つまり、「こいつは仕事ができるのか?」「自分たちの足を引っ張らないか?」
「受け答えはきちんとできるのか?」という疑心暗鬼から入ります。
仕事を一生懸命覚えて出来るようになるとはじめて
打ち解けられるのです。
さらに、
ヒトというのは「特別扱いを許さない」ように出来ています。
1人だけ優遇されているとか、ズルをしているとか、サボっているとか
女性だと嫉妬が絡んで感情がねじれ「いじめ」に発展します。
このあたりの人間模様のグラデーションの移り変わりも
丁寧に描かれています。
でも本書はたったの160ページしかないんですよね。
この職場の人間関係やいじめの部分は本作のメインテーマではないですが
よくこれだけのページ数で上手く表現されているな! と感動しました。
おもしろかったポイント③ 不審者っているよね
私の街にも不審者はいます。
駅前に「ちょんまげのおじさん」がいたり、
近所のスーパーに「セーラー服のおじさん」がいます。
でも私とその 「ちょんまげのおじさん」「セーラー服のおじさん」
との間にどれくらいの差があるでしょうか。
あるでしょうかとクールに言ってみると、意外に大きな差があっててくれ!
と慌てて言いたくなりますが。
本書では「わたし」が「むらさきのスカートの女」に興味を持ち、
よくよく観察してみるとこから始まります。
そんな部分を読んだ時に、
ちょっと 「ちょんまげのおじさん」や「セーラー服のおじさん」 の
あとをつけたりしたいという気がほんの少し湧いてきました。(しないけど)
意外にふつうのひとかもしれないし、クレイジーな人かもしれません。
「むらさきのスカートの女」はどうでしょうか?
是非読んで確かめてみてください。
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