【オススメ本紹介】中野信子『空気を読む脳』社会になじめない人たちを救う一冊。

読書感想

学校、職場、地域のコミュニティ
感動、絆、美しさは、時として
「個」を押しだまらせる「空気」のような力があります。

その見えない「空気」について
脳科学的に解きあかそうとしたのが本書です。

「いじめ」はヒトの本能である。

例えば、「いじめ」は脳に刻まれた人間の本能です。

ヒトは猛獣のようなどう猛さや、スピード、筋力、武器を
持ち合わせていません。

ぜいじゃくなヒトは「社会」を形成することで
お互いにリソースを出し合い、
協力することで生きてこれたのです。

この「いじめ」の本能がなければ「ヒト」は今日まで種を残し、
生きてはこれませんでした。

社会の脅威となるモノ

古代において、ヒトの脅威となるのは外敵というよりは
この社会を乱すもの、不正を行うもの、
タダノリをするものたちです。

コミュニティに1人タダノリをするものがいると
「リソース」を出さなくても利益が享受できるということになり
コミュニティが崩壊しかねません。

そこでそういったものには「制裁」が加えられました。

コミュニティを維持しつづけるために
イチ早く不正を検知し、制裁を加えるといった機能が
本能に刻みこまれたのです。

「いじめ」は楽しい

しかし、制裁にはリベンジという「リスク」が伴います。
それでも制裁を加えるのは、制裁を加えるさいに、
快楽物質「ドーパミン」が分泌されるからです。

これが「イジメが楽しい」といったことや、
「不倫バッシング」がやまない理屈、理由です。

困ったことに、現代では、社会性、愛、絆が強固であることが
これらの監視の目(本書では裏切り者検出モジュールと呼ぶ)が
厳しくさせ、そういった「空気」が「個」を押しだまらせる
圧力になっているのです。

例えば、「自粛警察」のマスクをしない人や、
飲食店への嫌がらせ行為などはこの理屈でしょう。

冷静に考えれば不倫バッシングは酷過ぎると名誉棄損罪、
「自粛警察」の嫌がらせ行為も犯罪です。
それでもドーパミンによる快感があり、止まらないのです。

そしてそれを制裁を加えている側は正義感で制裁を加えているのです。

「空気」に押し黙らされる「個」

親、教師、上司のいうことや、
家庭、学校、職場の集団の中で
息苦しい思いや、苦しくつらい目にあっている人たちが
たくさんいます。

そういった「社会」になじめなかった人たちに、
本書は救いを与えてくれます。

脳科学的な見地から
そういった「社会」になじめなかった者が、
「社会」とどう折り合いをつけるか、
またどのように自分をコントロールすればよいかなどが
数多くの研究データと共に示されています。

私もおおいに救われました。本書と出会えてよかったです。

その「弱さ」は実は「強み」かもしれない

日本人は、諸外国と比べ、不安を抱えやすい遺伝子を持っています。

「不安を抱えやすい」というのは「弱み」なのでしょうか?

千人を超える調査をしたところ、寿命の長短は食生活や運動などはあまり関係がなく、
短命な人は楽観的な性格で、長寿な人は不安、心配性な性格をしていたことが分かりました。

日本人は、「不安を抱えやすい」からこそ長寿大国なのです。

ほかにも、不倫遺伝子や、LGBTQなどを
ヒトが生物として生きていくという視点でみた場合、
また新しい理解になります。

一見、「弱み」と思えるそれは「強み」かもしれないのです。

現代社会に生きづらさを抱えている人に是非、オススメしたい一冊です。

空気を読む脳 (講談社+α新書)
職場で、学校で、なぜ日本人は「空気」を読むのか? 中野信子さんが脳科学をとおし、初めて日本人の心性と強みを読み解く。 「いじめ」「サイコパス」「キレる心」「だまされる心理」など、脳科学から人間を鋭く分析し、対処法をわかりやすく教えてきた中野信子さん。 本書では初めて、日本人の脳に迫ります。 「醜い勝ち方より美しい負け方...

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