※『MOTHER2』EDのネタバレがあります。
日本人の心の深層
河合隼雄先生はスイスに渡って心理療法の訓練を受けましたが、
日本に戻り実際の治療を行うと学んだ理論が当てはまらないことに
気づかされます。
そこで、日本の昔話から日本人の心の深層をさぐろうとしました。
日本の昔話「うぐいすの里」西洋の昔話「青ひげ」の比較
西洋の昔話は、男性がアクティブで、「獲得しよう」、「拡大しよう」、
という展開、結末が多いです。
一方、日本の昔話は、
「最初のシーン」と「最後のシーン」が全く同じで
一見、「何も起こらなかった」かのようにみえます。
河合隼雄先生は、
「何も起こらなかった」=「無が生じた」のではないかと分析します。
「最初のシーン」から、物語の途中にあったあらゆる出来事を、
「最後のシーン」に返ってくることで、包みこんでいるのです。
あらゆる出来事には、
対立するもの(男女、敵対、意識、無意識など)を
打ち負かしたり、切り捨てたりすることなく、
また、矛盾するものをそのまま置いたままにするという様子もふくまれます。
出会うけど戻る、という「循環」に「豊かさ」があるのです。
深いですね。
名作ゲーム『MOTHER2』も同じではないか
以下、ネタバレ含みます。
『MOTHER2』の最初のシーン

『MOTHER2』のED後のシーン

「最初のシーン」と「最後のシーン」を比較すると、
主人公が、自室で眠っていると、物音で目覚めるというシーンになっていて
見事に一致しています。
『MOTHER2』物語のクライマックスでは、
自分の心の中にある国「マジカント」で冒険をして、
心の奥底に入り込み、悪の部分と対峙する場面があります。
見事主人公の「悪の部分」に打ち克つと
真の力に覚醒し、超人的なパワーを得ます。
「無意識のイメージは自分へのサイン」ですからとてもユング的ですね。
仲間たちとともに色んな街を冒険し、
最終的に地球の危機を救います。
しかし、最後のシーンでは、
今までのことは何事もなかったかのように
最初のシーンに返ってきます。
ここに、良かったことも、悪かったことも、
対立していることも、矛盾していることも、
循環して全てを包みこむ、肯定的な意味での「無」があります。
そして、「包みこむ」のイメージと言えば・・・
そう! 母親です!
タイトルの『MOTHER』にはそういった深い意味が
こめられているのではないでしょうか。
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