【本の要約・気づき】『砂の女』安部公房著 ――物語の対比構造について

読書感想

22.06.06 放送 NHK 100分de名著

安部公房著『砂の女』の特集が

面白かったので内容をまとめていきたいと思います!

あらすじ

砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められた男の姿を描いた

不条理作品です。



主人公は中学校教師です。

休暇を利用して、砂丘へ昆虫採集に出かけました。



田舎の砂丘に着くなり、

新種の昆虫を見つけようと

追いかけていくうちに、

砂に囲まれた家を発見します。



好奇心からその砂の世界を

たずねていくのですが・・・。




対比構造・自由

著者の安部公房曰く、人の自由の捉え方には

2種類あるといいます。



鳥のように羽ばたきたい自由

自由だ! 自由だ! 社会のしがらみにはとらわれないぞ!

といって、俗世間から飛び出すことは自由ではありますが

一人孤独になるという不安感があります。



自分の世界に閉じこもりたい自由

一方、自分の世界に閉じこもろうという自由には

安心感はありますが、家族、友人、世間、社会など

しがらみはあり続けます。



どちらの「自由」がいいのか、

人間、誰しも一度は考えたことのある

テーマではないでしょうか。




対比構造・男と女

主人公の男

主人公の男は公務員です。

趣味は昆虫採集。



主人公は、社会に生きる男――

実存主義、自己顕示欲、承認欲求の塊。



趣味の昆虫採集も、

もし、新種を発見したら、

歴史に名を残せるかもしれない!

といった心の表れです。

少しほほえましいですね。




砂の女

一方、沈みゆく砂の中で暮らす女は

現実主義であり、

都会や社会の価値観とは対照的

価値観の持ち主。



主人公の男は、偶然訪れた(引き込まれた)

砂の世界を物見遊山、観光、レジャー気分で

楽しんでいますが、



日常的に暮らしている砂の世界の女からすれば

砂の世界は情緒や趣や風情なんて

感じられるものではありません。



都会の人間が、田舎暮らしや、

農業にちょっと憧れを

頂くのと同じですね。



少し田舎に対して上から目線になっていたり、

田舎暮らしや農業も趣味や、興味本位で

手を出せるものではありません。

実際は過酷です!



ですので当然、

本書の主人公の男と

砂の世界に生きる女とは

価値観や会話がかみ合いません。



以上のような対比構造となっています。



次回は、砂の世界から帰ろうとする男が

帰れなくなり、あらゆる手段を使って必死に

脱出をこころみる、といった不条理な目に遭います。



砂の世界とは何を象徴しているのでしょうか、

女には、何か狙いがあるのでしょうか。

次週が楽しみです!

次回に続きます。

『砂の女』安部公房著 Part2

(次回リンク予定地)

砂の女 (新潮文庫)
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