先日読んだ同著者の『逃亡くそたわけ』が
面白かったので、他の作品も読みたくなり手に取りました。
読み始めてすぐに思ったのですが、
わたし、この著者の文章がすごく好きです。
この瞬間ファンになったのだと確信しました。
著者:絲山秋子
東京都出身。54歳。早稲田大学卒業後、住宅設備機器メーカー営業職として数度の転勤を経験。
病気により休職し、休職中に執筆活動をはじめます。
(Wikipediaより)
女性で、営業職で、転勤族は珍しいですね。
本書は、過去に住宅設備機器メーカーに勤めていた
著者の経験が活かされた表題作『沖で待つ』、『勤労感謝の日』、
『みなみのしまのぶんたろう(文庫版のみ収録)』の3篇からなる短編集です。
おもしろかったポイント①
『勤労感謝の日』
ひょんなことから仕事を失ってしまい、
お見合いもうまくいかない、
クリスマスにひとりぼっちの独身女性のリアルなぼやきがいいです!
勤労感謝の日とは、誰が、誰に、何を、
何のためにするものなのかといったことを
1日の中でささやかに語られています。
とてもすてきなお話です。
おもしろかったポイント②
『沖で待つ』
主人公は女性。新入社員、営業職、初めての転勤、
慣れない仕事、なじめない地元の人たち
営業職ならではの客先、取引先、現場の職人とのトラブルがリアルに綴られています。
ある日、同期の太っちゃんと居酒屋でお互いの秘密を打ち明け
その秘密を先に死んだ方が処分するという約束を誓い合います。
そして不慮の事故から太っちゃんは亡くなってしまいます。
そして、主人公は約束通りその秘密を処分することに。
ここで、ポイントなのが、
なぜ、主人公は秘密を秘密のままのぞき見することなく
処分することが出来たのか。
是非、作品を読んで、恋愛関係でもない、友情とも少し違う2人に
どのような結びつきがあったのか、確かめてみて欲しいです。
私も同じサラリーマンなので共感しやすかったからか、
涙がこみあげてきました。
おもしろかったポイント③
私は純文学に慣れ親しみたくて、純文学にトライしています。
純文学は難解だ。
「面白さ」はあらかじめ用意されていない。
編まれたテクストを自分でほどいていき、
「面白さ」に自分で気づいて、自分で拾いあげる努力が必要である。
という先入観が、また邪魔しました。
一度目は 今村夏子『あひる』 でこの邪魔が起きました。
作者の意図を裏読み、深読みするのではなく、
素直に楽しめばいいんだ、ということを
あとがき解説を読んで、あらためて気づかされました。
わたしはまだまだ純文学初心者です。
しかしこういう経験も道の途中では楽しく思います。
絲山秋子『沖で待つ』オススメ小説です!
短編集なので、さっくり読めます。読書の秋にどうぞ。

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